ニジンスキー
Nijinsky
日本公開日 1982年10月1日
ロシアの天才バレエダンサー・振付師ニジンスキーの伝記映画です。
監督は『チップス先生さようなら』や『愛と喝采の日々』で知られるハーバート・ロス。
私はケン・ラッセル監督の『バレンチノ』で、バレンチノ+ニジンスキーの男同士でタンゴを踊るシーンを観たことをきっかけに、ニジンスキーという人物に興味を持ちました。
ニジンスキーの振付による『牧神の午後』や『春の祭典』は、古典的なバレエとは一線を画し、古代エジプトの壁画を思わせるような前衛的なポーズが印象的です。筋肉が常に緊張状態にある無理なポーズは、「ダンスとはまさに肉体表現だ」と実感させられました。
ニジンスキー役のジョルジュ・デ・ラ・ペーニャのしなやかな肉体もまた美しく、男性バレエダンサーに対して性的な魅力を感じたことはなかった私ですら、彼の肉体には特別な魅力を感じました。
物語は精神病院で放心状態のニジンスキーの姿から始まり、彼がやがて精神を病んでいくことが暗示されます。
ニジンスキーとロシア・バレエ団の主宰者ディアギレフとの愛人関係は「そういうものか」と納得しつつも、縁を切られたことをきっかけに、ニジンスキーが崩壊していく姿が痛々しいです。
当時の私は、芥川龍之介やゴッホなどを思い浮かべ、「先端の表現に挑む芸術家は、みな狂気と紙一重の境地にいる」と、勝手に思い込んでおりました。ニジンスキーもその1人なのだと納得した次第です。
この作品でニジンスキーを知ってから、モダンダンスのマーサ・グレアム舞踏団に受け継がれた緊張感を伴う独自の肉体表現、さらにはマドンナへの影響など、表現の連鎖が続いていることも知ることになりました。
*この作品は、日本では残念ながらソフト化されておらず、アメリカ版の輸入Blu-RayやDVD(字幕なし)を購入するしかありません。(予告編や部分的な映像はYouTubeで見ることができます)
NHK-BSやWOWOWに何度も放送リクエストを送っているのですが、いまだに実現せず。
版権面でややこしいところがあるのかもしれませんね。ジーザス・クライスト・スーパースター(1973)も版権のややこしさから国内ソフトが出ない時期が長くありましたから。
▼ [ニジンスキー(1980)から”牧神の午後”]YouTube動画から