悪霊島
劇場公開日 1981年10月3日
1980年に出版された横溝正史の最後の長編作品「悪霊島」を、金田一耕助=鹿賀丈二、篠田正浩監督で映画化した作品。
本作の特筆すべき点として、テーマソングにザ・ビートルズの「レット・イット・ビー」が使われていることが挙げられます。
当時、TVに予告CMが大量に流れたことで、ビートルズをまだ知らなかった世代にも彼らの存在をしっかりと浸透させました。当時の僕は「日本映画にこの曲が使われるなんてあり得るの?」と畏れ多さを感じていました。
映画はジョン・レノンの訃報を伝えるTVニュースから幕を開け、舞台となる1969年の時代感と田舎の風景に「レット・イット・ビー」のメロディが意外にも馴染んでいたと思います(ちなみにこの曲はポール作)。
ただ、やはり贅沢なことには変わりなく、版権の問題でソフト化された際には、別のカバー音源に差し替えられていました。
「鵼(ぬえ)の鳴く夜は恐ろしい…」というキャッチコピーと、「悪霊」というタイトルから、おどろおどろしいオカルト的な恐怖を期待していましたが、その面は薄味でした。
しかし、撮影は名匠・宮川一夫の手によるもので、映像美と構図は見応えがあります。
また、篠田監督の妻である岩下志麻さんも強い存在感を放っています。
金田一耕助役の鹿賀丈二さんは、石坂浩二版の金田一に少しワイルドさを加えたような風貌で、意外にマッチしていたと思います。
それでも作品全体としての印象が薄いのは、やはり期待していたおどろおどろしさが足りなかったからかもしれません。
ポスタービジュアルも、80年代に入るとガラリとクオリティが変わるんですね。余白を詰めた枠線で名前を囲むスタイルが当時の流行を感じます。