さらば箱舟
Farewell to the Ark
劇場公開日 1984年9月8日(チラシは 1985年再映時のもの)
![[さらば箱舟 映画チラシ表面]](https://eiga-flyer.com/wp-content/uploads/2026/10/さらば箱舟_1-1380x1048.jpg)
![[さらば箱舟 映画チラシ裏面]](https://eiga-flyer.com/wp-content/uploads/2026/10/さらば箱舟_2-1380x1049.jpg)
『書を捨てよ町へ出よう』『田園に死す』『草迷宮』などに大きな衝撃を受けてきた私にとって、前年の寺山修司監督の訃報はあまりにショックでした。
その悲しみも冷めやらぬ中で迎えた遺作の公開です。
舞台は外界から隔絶された小さな村。
本家の柱時計以外の時計をすべて埋め、村の時間を支配する時任大作(山﨑努)。
従兄妹同士で結ばれながらも、貞操帯の鍵を失ったことで葛藤する時任捨吉(原田芳雄)とスエ(高橋洋子)。
地主の時任家を中心に、因習と愛憎に縛られた人々の興亡が描かれます。
画面いっぱいに広がる怪しくも美しい映像と、J・A・シーザーの音楽が見事に融合し、これまでのアングラ的な世界観を超えた、神話的で壮大な叙事詩が展開します。
土着的な儀式と暗黒舞踏のシーンには、ただただ引き込まれました。
滅びゆく世界から生命を救い出すはずの「ノアの箱舟」。
しかし、この村という箱舟が守ろうとしていたのは、未来ではなく過去だったように思えます。
血縁や因習、死者の記憶を抱え込み、時間さえも閉じ込めた世界。
そこから旅立つことは、自分を縛り続けてきた過去との決別でもあります。
けれど、村を離れても、人は自分の記憶から逃れることはできないのでしょう。
寺山監督は、この作品に何を遺し、何に「さらば」と告げようとしたのか。
そんな思いを巡らせながら、映画館を出たときには、ひとつの時代が終わったような寂しさと、強烈な美学を浴びた興奮が入り混じっていました。
しばらく呆然と街を歩いたあの日の記憶が、今も鮮明に残っています。
寺山修司が出演・監督する配信中の映画 13作品|Filmarks 映画
▼ Saraba hakobune (1984) – Rituel|Peter Kien’in Dram Atölyesi