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シャイニング

The Shining
日本公開日 1980年12月13日

シャイニング[映画チラシ表]
シャイニング[映画チラシ裏]

キューブリックはさまざまなジャンルで最高クラスの映画を作り上げましたが、この作品は私にとって、ホラー映画のNo.1です。不穏な雰囲気と緊張感が途切れることなく続き、脳裏に焼きつくシーンの連続。まるで映像と音響で繰り広げられる恐怖のパフォーマンス・アートのようです。

雪に閉ざされた歴史あるオーバールック・ホテルで管理人を務めることになったジャックとその家族。息子のダニーは不思議な力でホテルの恐ろしい出来事を予見しているものの、父がせっかく得た職を失いたくないため言い出せません。妻は、豪華なホテルでの生活を楽しもうとしています。

ジャックが狂気に陥るのが「急すぎる」と感じる人も多います。
彼の変化は、ホテルが閉鎖された直後から始まっている気がします。妻に「書く習慣を取り戻すといいわ」と言われた直後、白紙のタイプライターと吸いかけのタバコが映り、ジャックは壁にボールをぶつけてキャッチしている。すぐに書けないことがわかります。妻と息子は庭園迷路で遊びますが、ジャックはホテル内の模型をじっと見つめます。

このシーンで、庭園迷路が真上から映し出され、そこに妻と息子が手を繋いで歩いている姿が見えます。これはジャックの視点ではなく、まるで「バリー・リンドン」のナレーションのように、超越した存在が見せているようにも感じます。その夜、タイプライターに向かうジャックに声をかけた妻へキレるシーンからも、ここでもう彼が普通ではないことが伝わります。あの超俯瞰の迷路のシーンで、ジャックに何かが起きたはずです。

思うように仕事ができないジャック、才能を認めたくない葛藤、そしてアルコールを絶っていることによる不安定さ。彼は、ホテルに潜む邪悪な力に容易に取り込まれてしまったのでしょう。

印象的なのは、ダニーが足こぎ車で廊下を駆け抜け、角を曲がるシーン。何かが潜んでいるかのような緊張感があります。ダイアン・アーバス風の双子の少女や、237号室の腐敗した女性の死体も忘れられません。

ジャックが斧を手にダニーを追いかける夜の庭園迷路のシーン。キューブリックの作品は感情移入しにくい部分がありますが、ここではジャックが哀れに思えてきます。正気の彼は息子を愛してるのに、息子もまた父を愛していたのにって。この展開のオチとなる、ジャックのあの顔。他のホラー映画では見たことがありません。これを真似すれば、すべてこの作品のパロディになってしまいますよね。

そして、迷路のシーンをブレずに霊体のように移動撮影するために開発されたステディカム。この技術はその後の映画撮影に欠かせないものとなりました。

アメリカ国立フィルム登録簿 登録作品