地獄の黙示録
Apocalypse Now
日本公開日 1980年3月15日
スクリーンに映る映像が、その撮影に気狂いじみた途方もない労力がかけられているのを感じさせるだけでなく、その描写の巧みさに圧倒される「偉大な映画」が、僕には3本あります。「2001年宇宙の旅」「アラビアのロレンス」そして「地獄の黙示録」です。
「ベトナム戦争の現地では、こんなクレイジーなことが本当にあったの?」と、ただただ衝撃を受けました。
ワグナーの「ワルキューレの騎行」を大音量で流しながら、ヘリコプターが村を機銃掃射。その中でサーフィンを楽しむキルゴア中佐! そして、ナパーム弾で木々が爆発し、炎の壁が立ち上がるシーン…。こんなに大量の木を本当に爆破して撮影したの!?って、コッポラ監督の狂気にも震えました。それだけじゃなく、すべてのシチュエーションがぶっ飛んでて、ドラッグに頭やられてしまうような体験でした。
戦争映画のクライマックスといえば、大迫力の戦闘シーンを期待してしまいますが、この映画では違います。
森の奥に独裁王国を築いたカーツ大佐(マーロン・ブランド)と、彼を暗殺しに来たウィラード(マーティン・シーン)が向き合い、深淵な会話が続くのです。静かなんですが、カーツの存在感がとんでもなくて、終始緊張感が漂っています。静かに語る声に催眠術をかけられてしまうようでした。
この映画にはラストが2種類あります。
35mmシネマスコープ版では、暗い森に爆弾が降り、炎が立ち上がる映像がエンドクレジットとともに流れます。王国が一斉に燃え上がるシーンで「Apocalypse Now」のタイトル表示。
一方、70mm版ではその爆撃シーンがなく、黒い画面に音だけが響くという演出です。
僕は35mm版のラストが美しくも恐ろしく感じたので、「なぜ70mm版ではこの光景を見せないんだろう?」と思っていたのですが、コッポラ監督によると70mm版が本来の意図に沿っているとのことでした。その後に公開された完全版でも70mm版のラストが採用されていましたね。