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バリー・リンドン

Barry Lyndon
日本公開日 1976年7月3日

バリー・リンドン[映画チラシ表]
バリー・リンドン[映画チラシ裏]

スタンリー・キューブリック監督が描く、18世紀ヨーロッパを舞台に、農家の息子バリーが人生の転機を行き当たりばったりに選択するうち、貴族にまで成り上がり、やがて没落していく大河ドラマです。
バリーは特に育ちが良いわけでも頭が優れているわけでもありませんが、運と度胸で道を切り開いていきます。
そんな彼の物語を、観客に感情移入させるのではなく、美術館に展示された絵画を眺めるような視点で見せる、独特な語り口で展開していくのが特徴的です。

バリーというキャラクターには共感しにくくても、演じたライアン・オニールの顔立ちや声には、どこか憎めない魅力があり、まんまとキューブリックの狙いにハマってしまいます。

この作品で誰もがまず語るのは、映像の美しさ。18世紀ヨーロッパの情景が、昼は自然光、夜はロウソクの光だけで撮影され、まるでその時代に描かれた絵画のように光と構図が見事に再現されています。
ロウソクの光だけで撮影するにあたり、NASAが開発した50mmF0.7のレンズを、映画用ミッチェル・カメラに取り付けるために改造を加えたエピソードは有名です。
当時のフィルム感度はASA100程度で、今のようなデジタル技術もない中、非常に革新的な撮影方法でした。その結果、ロウソクの光に浮かび上がる人物の顔は、唯一無二の美しさを放ち、それは「バリー・リンドン」という作品の独自性を際立たせています。

映画の中には18世紀ヨーロッパの風景や暮らし、衣装、小道具などが丹念に再現されており、一枚一枚の絵画を鑑賞するように画面の隅々まで楽しむことができます。映画の画面をそんな感じで見ない人にとっては、ただ長い映画だなぁと感じるかもしれませんが…。