ゾンビ
ZOMBIE – Dawn of the Dead
劇場公開日 1979年3月10日
今やハロウィン仮装の花形ともいえるゾンビですが、そのゾンビ像を形作る「人を喰らう生ける屍」「ゾンビに噛まれるとゾンビになる」「脳を破壊しない限り倒せない」という3つのルールは、ジョージ・A・ロメロ監督によって確立されました。
公開当時、この作品は残酷な描写が大きな話題となりましたが、単にゾンビの恐怖だけでなく、人間行動の本質を見せつけられた作品でした。また、カット割りや音楽の使い方など、映画としての魅力に引き込まれる人も少なくありませんでした。
ロメロのゾンビ映画には1作目があり、その傑作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は日本未公開だったため、日本の観客は本作『ゾンビ』を、イタリア系の残酷ホラーの新作程度の認識で観てしまい、助走区間なしでゾンビの恐怖に直面してしまったことになります。*1
*1 ロメロ・ゾンビ第一作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」を、リメイクでなく単にパクった作品が、イタリア、スペイン合作「悪魔の墓場」(1974年)です。「ゾンビ」より先の1975年にヘラルド配給で日本公開されています。日本ではこの作品の方が、人を喰らうゾンビ映画の初上陸だったようです。
1作目が未公開だったこともあり、チラシ裏面の解説では、「ゾンビとは、吸血人間のこと。」なんて書かれてましたから。えっ?認識が違うって思っちゃいますよね。
その後、レーザーディスク版ソフトが発売され、「映画館で観たときと印象が違う」と感じたことから、この作品には複数のバージョンが存在することがわかりました。
日本で公開されたのは、ロックバンド「ゴブリン」の音楽が全編に使われた、ダリオ・アルジェント監修のヨーロッパ版で、さらに日本独自の残酷シーンにストップモーションが施されたものです。
一方、レーザーディスクに収録されていたのは、ロメロ監督によるディレクターズ・カット版で、音楽や効果音の演出が異なります。さらに、アメリカ公開用バージョンも存在します。
どれが良いかではなく、どのバージョンにもそれぞれの良さがあるというのが、今では通説です。
この作品も、『オーメン』と同様、有楽座(1,572席)というロードショー映画館のフラッグシップで上映されました。
シリーズ1作目は「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」で、今作の原題は「ドーン(夜明け)・オブ・ザ・デッド」。続編は「デイ(日)・オブ・ザ・デッド」で、ゾンビによって世界が徐々に侵食されていく様子が描かれていきます。
*地獄は満員御礼『ゾンビ』|字幕映画のススメ
海外版ポスターのほか、公開当時のエピソードが楽しめます。
*【原点にして頂点】現代のあらゆるゾンビ映画の元ネタになった70年代の傑作『ゾンビ』を完全解説!|新タニムラ洋画劇場【ホラー映画解説Channel】(YouTube)
作品の詳細な解説ばかりでなく、その背景となる事柄までも語ってくれています。