Wの悲劇(1984)
Tragedy In W
劇場公開日 1984年12月15日
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夏樹静子の小説を原作としながら、その原作を映画の中で舞台劇として上演される演目に用い、映画そのものは舞台女優を目指す静香(薬師丸ひろ子)と、劇団の看板女優・羽鳥翔(三田佳子)をめぐる物語として描くという大胆な構成です。
原作を劇中劇として取り込みながら描かれるのは、女優になること、そして「女優であり続ける」ことの覚悟と残酷さ。『Wの悲劇』というタイトルも、Woman=女性たちの悲劇、さらには舞台と現実という二重の世界に重なって見えます。
それでいて最後に残るのは、一人の少女が女優へと踏み出していく青春映画としての鮮やかさでした。
こうした構成の巧みさに加え、澤井信一郎の力の入った演出と役者たちの熱演によって、本作は単なるアイドル映画の枠を大きく超えています。毎日映画コンクールの日本映画大賞をはじめ、ブルーリボン賞、キネマ旬報ベスト・テンなどでも高く評価され、1984年を代表する日本映画の一本となりました。
それまでの薬師丸ひろ子には、本人そのものの魅力を生かしながら、役柄ごとの事件や状況に立ち向かっていく印象がありました。
しかし本作では、駆け出しの女優をきちんと「演じている」姿に目を見張ります。相当厳しく役者として鍛えられたのでは、と当時感じたものです。
そんな静香に思いを寄せる森口昭夫(世良公則)も、飾らない素朴な好青年ぶりがかえってかっこよく見えました。
そして、とにかくセリフの強い映画です。「顔をぶたないで。私、女優なんだから!」に始まり、三田佳子の「女優、女優、女優!」など、見終わったあと友人と何かにつけて真似して遊んだ記憶があります。
それから10年ほど経って、『吉原炎上』『疑惑』、そして『Wの悲劇』が、なぜか日本のゲイの間で強く支持される「鑑賞必須」のような映画になっていることを知りました。
誰かが決めたわけでもないのに、この3本に心惹かれるかどうかが、自分の中にゲイ的な感性があるかを測る、ちょっとしたリトマス試験紙のようになっていたのが面白いところです。
どの作品にも共通するのは、圧倒的な「女」の存在感です。
女性を性的な対象としてではなく、逆境の中でも負けず、ときには傷つきながら、それでも自分を貫き、輝こうとする一人の人間として見ていたからこそ、そこに憧れや共感を感じたのかもしれません。
『Wの悲劇』は青春映画であると同時に、そんな「女優」という生き方そのものを焼き付けた映画です。
▼ 『Wの悲劇』劇場予告編|花伝亭仁消の「名画座すぷろけっと」