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マルサの女

A Taxing Woman
劇場公開日 1987年2月7日

[マルサの女 映画チラシ表面]
[マルサの女 映画チラシ裏面]

『お葬式』では葬儀、『タンポポ』ではラーメン。そして伊丹十三監督が第3作で選んだ題材は、なんと「税務調査」でした。

国税局査察部、通称「マルサ」。それまで一般にはあまり知られていなかったこの組織の存在と、あの手この手で脱税を企てる強欲な人間たちの滑稽さが、強く印象に残っています。

物語は、税務署員から国税局の査察官となった板倉亮子(宮本信子)が、巧妙な脱税を繰り返す実業家・権藤英樹(山﨑努)を追い詰めていくというもの。隠された帳簿や現金を探し出す執念、調べる側と調べられる側の息詰まる駆け引きが、スリリングに描かれます。

そして何より驚かされたのが、宮本信子です。

それまでは、言葉は悪いですが、どこか庶民的な「おばさん」というイメージを持っていました。
ところが本作では、寝癖のついたようなボブカットで、相手が誰であろうと臆することなく、ぐいぐい前に出ていく強い女性を演じています。

こんな役まで自分のものにしてしまうのか! という驚き。それも伊丹監督の狙いだったのでしょうか。

チラシの表面を飾る宮本信子の姿も印象的です。サングラスをかけたり外したりする仕草を捉えた、青みがかったモノトーンの写真を6つのカットで構成。まるでハイブランドの広告のような洒落たビジュアルは、宮本信子という女優の新たな魅力を引き出し、まさにこの作品のシンボルといった存在感があります。

『お葬式』『タンポポ』、そしてこの『マルサの女』によって、ある分野に焦点を当て、一般にはあまり知られていない知識や裏事情をふんだんに盛り込む、まるでマニュアルのような伊丹映画のスタイルが確立されたように思います。
本作ではそのスタイルを生かしながら、捜査サスペンスとしての緊張感を持たせつつ、決してシリアスになりすぎない絶妙なバランスで物語を展開させているところが秀逸でした。

もうひとつ印象に残っているのが、画面サイズです。

当時の映画ではビスタサイズやシネマスコープが一般的になっていた中、本作はあえて、ほぼ正方形に近いスタンダードサイズで撮影されています。

横に広がる画面ではなく、中央に視線が集中する画面構成。それによって、人物の表情や動き、人物同士の距離感が際立ち、時には独特の緊張感を生み出しているように感じました。
本多俊之のテーマ曲も、耳に残りました。テレビのバラエティでも「捜査」と展開では、よくこの曲使われましたよね。

映画を観た後には、伊丹十三著『マルサの女日記』を買って読みました。

あのシーン、あのカットを撮るために、どんな準備を重ね、どんな意図を持って撮影に臨んだのか。その過程が具体的に綴られていて、映画作りの裏側を知ることができる、まさに映画の教科書のような一冊でした。

*第11回日本アカデミー賞(1988年):最優秀作品賞、最優秀主演女優賞(宮本信子)、最優秀主演男優賞(山崎努)、最優秀助演男優賞(津川雅彦)、最優秀監督賞および最優秀脚本賞受賞

▼ Marusa no Onna (1987) Trailer HD|tooiongaku

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