ドグラ・マグラ
劇場公開日 1988年10月15日
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夢野久作の『ドグラ・マグラ』は、『黒死館殺人事件』『虚無への供物』と並び、日本探偵小説の「三大奇書」のひとつと呼ばれ、今なお特異な存在感を放っている一冊です。
実際に読んでみると、冒頭から頭が混乱し、脳内に浮かぶイメージが歪み、錯綜し、いったい何が現実なのかわからなくなっていく。
読み進めるだけで、やたらと脳が疲れる読書体験でした。
だから映画化された作品を観たときには、「あの原作をよく整理して、109分に収めたな」と感心したものです。
ところが、自分の中で『ドグラ・マグラ』とは、文字を追いながら頭の中に生まれてくる、形の定まらない不確かな世界。
現実なのか妄想なのか、記憶なのか夢なのかもわからない、どこか爛れたような脳内イメージとして残っていました。
そのため、映画として人物や場所が具体的な姿を与えられ、明確な実写映像として目の前に現れると、どれほど怪しげな人物や出来事が登場しても、意外なほど「クリーン」に感じてしまったのを覚えています。
だからといって映画がわかりやすかったわけではありません。
むしろ、整理されているはずなのに、すべてが妄想と片付けられない、原作以上に難解な構成で迫ってくる作品でした。
小説をそのまま映像化するのではなく、原作を一度整理しながら、映画になったことでまた別の迷宮を作り出してしまったような作品。原作とは違う意味で、観る側の頭を混乱させてくれる怪作でした。
そして忘れられないのが、戸川純やゲルニカ周辺のアートワークでも知られるイラストレーター、太田螢一によるポスターです。
これがもう、ものすごいインパクト。生理的な気持ち悪ささえ感じさせる独特の絵ですが、不思議なことに、映画を観て「クリーン」と感じた映像世界よりも、こちらのほうが原作を読んでいるときに頭の中に浮かんでいた、爛れたような不確かなイメージに近いものでした。
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