タンポポ
Tampopo
劇場公開日 1985年11月23日
![[タンポポ 映画チラシ表面]](https://eiga-flyer.com/wp-content/uploads/2026/10/タンポポ_1-1380x1955.jpg)
![[タンポポ 映画チラシ裏面]](https://eiga-flyer.com/wp-content/uploads/2026/10/タンポポ_2-1380x1956.jpg)
伊丹十三監督の作品の中で、私が一番好きなのが、この『タンポポ』です。日本映画全体を見渡しても、個人的なベストランキングの上位に入る一本です。
評判のラーメン店なら行列に並んででも食べに行く、そんな人でまだ観ていない方には、ぜひ観てほしい映画です。
『お葬式』で鮮烈な監督デビューを飾った伊丹十三が、次に選んだ題材は「ラーメン」。
寂れたラーメン店を営む未亡人タンポポ(宮本信子)が、トラック運転手のゴロー(山﨑努)たちの力を借りて、人気店を目指して奮闘する物語です。
しかし、この映画の面白さは、ラーメン店再建の物語だけではありません。
本筋が進んでいるかと思えば、ふと通りすがりの人物に視点が移り、そこから「食」にまつわる別のエピソードが始まる。そして、そのほとんどが、ちゃんと笑いの「オチ」をつけて本筋に戻ってくる。
この独特な映画の語り口を観ていて思い出したのが、ルイス・ブニュエル監督の『自由の幻想』でした。一つの物語を追っていたはずが、いつの間にか別の人物の物語へと移っていく、あの予測不能な展開です。
『タンポポ』では、日本人が大好きなラーメン作りをじっくり掘り下げながら、その周囲にさまざまな「食」のエピソードが自由奔放に広がっていきます。一本の小説を読み進めるというより、伊丹十三のエッセイを気の向くままに読んでいるような気軽さ。そんな本筋と脱線が絶妙に融合した構成こそ、この映画の大きな魅力だと思います。
数あるエピソードの中でも、特に印象に残っているのが、グルメなホームレスたちの話です。
深夜のレストランの厨房に忍び込み、手際よく作り上げるオムライス。ライスの上にふんわりと焼いたオムレツをのせ、ナイフで切り込みを入れると、中から半熟の卵がとろりと広がっていく。
この作り方には目から鱗が落ちました。何より、とにかくおいしそうで、無性に食べたくなったのを覚えています。
このスタイルのオムライスは、その後広く知られるようになり、今でも「タンポポオムライス」の名前で提供している洋食店があります。映画の中の一場面が、実際の食文化にまで影響を与えたというのも面白いですね。
また、病床に伏せる妻に「眠ったら死ぬぞ!そうだ、飯を作れ、かあちゃん!」と呼びかけると、妻がよろよろと立ち上がってチャーハンを作り出す「最後のチャーハン」も大好きです。
食べることへの好奇心、人間の欲望や滑稽さ、そして何より映画を作ることそのものを楽しんでいるような自由さ。『タンポポ』は、伊丹十三のユーモアと遊び心が、最も幸福な形で結実した作品だと思います。
▼ タンポポ 予告篇|HD Retro Trailers