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アラビアのロレンス(1963)

Lawrence of Arabia
リバイバル公開 1971年、1974年1月26日/1983年10月18日

[1971年公開時 映画チラシ表面1]
[1971年公開時 映画チラシ表面2]
[1971年公開時 映画チラシ裏面1]
[1971年公開時 映画チラシ裏面2]

[1983年公開時 映画チラシ表面]
[1983年公開時 映画チラシ裏面]

デビッド・リーン監督は、歴史や人間ドラマを壮大なスケールと緻密な演出、圧倒的な画面構成で描くイギリス出身の巨匠です。
そのデビッド・リーン監督の代表作といえば、この「アラビアのロレンス」。

第一次世界大戦中、風変わりな青年将校ロレンスがアラビアに派遣され、現地の部族と心を通わせながらオスマン帝国に対抗する反乱を導いていく過程を追います。ロレンスは戦果を重ねて英雄視されますが、次第に自らの立場と信念の間で揺れ動き、精神的な限界に追い詰められていきます。

本作の大きな魅力は、何といっても圧倒的な映像表現。広大な砂漠のスケールを最大限に活かしたカメラワークは、スクリーンを通して“空間の大きさ”そのものを感じさせます。スケールの壮大さと共に、砂漠の中のちっぽけな人間の存在、そして内面の葛藤を描く手腕は、ただただ感服してしまいます。

主演を務めたピーター・オトゥールは、当時ほぼ無名ながら本作で一躍注目を集め、繊細で内面の揺れを感じさせる演技でロレンス像に強烈な存在感を与えました。彼以外でロレンスを演じることは想像ができないくらいです。アカデミー主演男優賞を今作で取れなかったことが不思議というか残念です。また、部族の首長アリを演じたオマー・シャリフも、その知的で威厳ある佇まいにより、記憶に強く焼き付けられます。

CGなどない時代、緻密に計算された構図の映像や見渡す限りの人々を撮影するのに、どれほど過酷でタフな精神力が必要だったかと思うと、人知を超えた偉業としか言いようのない映画です。

一方で、この作品の背景には、複雑な現実があります。ロレンスが関わったアラブ反乱は、イギリスがアラブ諸国に「独立を支援する」と約束したことから始まりました。ところが、イギリスはその裏で、フランスやユダヤ人指導者たちとも別の取り決め(いわゆる三枚舌外交)をしていたのです。
つまり、アラブには「味方」と言いながら、水面下では領土の分割や別の支援を進めていたのです。
この矛盾は、アラブの人々の信頼を大きく裏切り、その後の中東地域の対立や混乱の原因のひとつになりました。
映画では描かれませんが、ロレンス自身もこうした裏切りに深く傷ついたとされています。

初公開から20年以上が経った1988年、デビッド・リーンを敬愛するマーティン・スコセッシやスティーヴン・スピルバーグらの尽力により、オリジナルより約20分長い完全版が復元・制作されました。このバージョンは日本では1995年に劇場公開されています。さらに2008年には、リーン監督の生誕100周年とコロンビア映画創立85周年を記念して、ニュープリント版がリバイバル上映されました。

アメリカ国立フィルム登録簿 登録作品



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