
ライアンの娘(1970)
Ryan’s Daughter
日本初公開 1971年4月24日
再公開 1977年1月




『ライアンの娘』は、第一次世界大戦下のアイルランドの小さな村を舞台に、ひとりの若い女性の情熱と孤独、そして周囲の偏見や政治的対立が交錯する、静かながらも濃密な人間ドラマです。
デビッド・リーン監督作品の中でも評価が分かれつつも、映像美と情感の深さで語り継がれる作品です。
物語の中心となるのは、宿屋の娘ロージーと、彼女が惹かれていく英国将校との許されざる関係。愛情のすれ違いと周囲の猜疑心が重なり、やがて村全体が彼女に対して敵意を向けていきます。政治的緊張と個人の情熱が交錯する中で、リーン監督は「愛することの代償」や「集団の狂気」といったテーマを静かに描き出しています。
アイルランドの荒々しい海岸線や風に揺れる草原といった自然の風景は、登場人物の心の揺れを代弁するかのように雄弁です。ロージーを演じたサラ・マイルズの演技も高く評価され、またジョン・ミルズは本作でアカデミー助演男優賞を受賞しました。